「ボールがない時こそ、サッカーの大事な時間だ」
この言葉を残したのは、スペイン代表として世界のトップを走り続けた、セルヒオ・ブスケツ選手です。
地味なプレーに見えながら、試合の流れを読み、相手のパスコースを消し、味方を活かす──
そんな“見えない貢献”のスペシャリストが伝えるこの言葉には、サッカーの本質が詰まっています。
今回は「オフザボールの重要性」と、子どもがその力を身につけるための視点や親のサポートについて考えていきます。
サッカーの大半は「ボールを持っていない時間」
1試合の中で、選手がボールを持っている時間は実はごくわずか。
9割以上は「持っていない時間」です。
にもかかわらず、子どもたちの多くは「ボールを持っている時」だけに意識が向きがちです。
- パスを出して終わり
- ボールが来るのを待っている
- 味方がドリブルしてる間は立ち止まる
こうした姿が見られるのは自然なことですが、実は“ボールがない時間”こそ、次のプレーをつくるチャンスであふれているのです。
オフザボールとは「先を読む力」
オフザボールの動きとは、ボールを持っていない時に、いかにプレーに関わるかということ。
- 味方がパスを出しやすいようにポジションを取る
- 相手DFの背後を突く動きを仕掛ける
- セカンドボールに備えてポジションを整える
つまり、ボールが来る“前”に、すでにプレーは始まっているのです。
この「予測する力」は、単なる身体能力ではなく、“考える力”によって磨かれていきます。
親が伝えられる視点とは?
子どもに「オフザボールの大切さ」を伝えるとき、難しい言葉や専門的な説明は必要ありません。
むしろ、身近なたとえで伝えることが効果的です。
- 「ドッジボールでも、誰かが狙われてる時に動くでしょ?」
- 「電車に乗る前に、ドアの近くで準備するみたいなもんだよ」
- 「ゴールに向かう道を、自分で作りに行くってことだよ」
こんな言葉なら、小さな子にも「動き出す意味」が伝わります。
オフザボールの力を育てる練習とは?
オフザボールの意識は、試合形式の練習やミニゲームの中で自然と育ちます。
しかし、いくつかの工夫でその成長を加速することができます。
たとえば:
- パス練習のときに「出したらすぐサポートの動き」をルールに加える
- ボールを持っていない時に「誰を見てた?」「どこに行きたかった?」と問いかける
- 味方のプレーを観察し、「このとき自分が何をしたら助けられる?」と一緒に考える
プレーの後に少しだけ“振り返りの時間”を持つだけで、子どもの理解は大きく変わります。
味方を活かせる子が、信頼される選手になる
サッカーはチームスポーツです。
だからこそ、「自分がどう輝くか」より、「味方をどう活かすか」を考えられる子は、チームから信頼されます。
- ボールを持っていなくても、走る
- 味方が困っている時に声をかける
- 自分が引きつけてスペースをつくる
こうした“地味に見える動き”こそ、試合を動かす力になります。
そして、それを大人がしっかり見て「今の動き、いいね」「○○くんがいたからあのプレーができたんだよ」と伝えることが、子どものモチベーションにつながります。
おわりに ― 「動いている自分を信じていい」
セルヒオ・ブスケツ選手は、決して派手なプレーヤーではありません。
しかし、監督やチームメイトから最も信頼される存在です。
子どもたちが、「ボールを持っていない時間こそ、次のプレーをつくっている」と気づけたとき、サッカーの面白さがぐっと広がります。
“オフザボールの自分”を大事にできること。
それは、サッカーだけでなく人間関係や社会の中でも大切な「周りを見て動ける力」につながっていきます。
見えないところで力を尽くす子を、ちゃんと見てあげる。
それが、次の成長への原動力になるのです。
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