こんにちは、慎二です。
今回は、「実質リターン」というあまり語られない投資上級者向けのテーマを掘り下げていきます。
「今年はS&P500が+10%も上がった!」
「長期国債は低リスクだけど利回りがイマイチ」
そんな会話の裏で、**本当に“資産価値が増えた”といえるのか?**を冷静に測る指標こそが「実質リターン」です。
名目のリターンだけを見て資産運用を判断していないか?
インフレ時代を生き抜くために、今こそ「お金の実質的価値」を見直してみましょう。
▼名目リターン vs 実質リターンの違いとは?
まずは定義を整理しておきましょう。
- 名目リターン:表面上の成績。たとえば「年利+5%」など。
- 実質リターン:インフレ率などを調整後の“実際に増えた価値”。
たとえば、年利+5%で運用できたとしても、その年のインフレ率が+3%なら、**実質リターンは+2%**しかありません。
つまり、インフレが高ければ高いほど、お金の「実力」は削られていくのです。
▼資産クラス別に見た“実質”の強さとは?
見かけのリターンが良くても、実質的には目減りしているケースもあります。
▼名目と実質リターンの比較(年平均・過去10年)
・米国株式(S&P500)
→ 名目リターン:+10.5% / 実質リターン:+7.0%
・日本国債
→ 名目リターン:+0.8% / 実質リターン:-0.5%
・ゴールド
→ 名目リターン:+6.0% / 実質リターン:+3.2%
こうして見ると、米国株は名目も実質も強い一方で、債券はインフレ環境では実質的な価値を失っていることがわかります。
▼インフレ耐性のあるポートフォリオ構成とは?
では、実質リターンを意識するにはどんな資産配分が適しているのでしょうか?
代表的なインフレ対策資産:
- TIPS(米国物価連動国債)
→ インフレ率に応じて元本が増える仕組み。円建て資産には少ない。 - REIT(不動産投資信託)
→ 物価上昇とともに賃料収入も上昇する傾向。 - コモディティ(ゴールド・エネルギー)
→ 貨幣価値が下がる局面で代替資産として評価されやすい。
こうした資産を**インフレヘッジ目的で“保険的に組み入れる”**ことで、実質的な資産目減りを抑制できます。
▼“デフレ脳”のままでは危ない?日本人の盲点
日本は長くデフレが続いた国。そのせいか、多くの投資家が「インフレなんて数%でしょ」「円で持っていれば安全」と考えがちです。
しかし、世界はすでに高インフレ×高金利時代に突入しており、円だけで持つ=実質価値が削られるリスクを抱えていることになります。
たとえば、日本円で1000万円保有していても、年3%のインフレが5年続けば、実質価値は860万円程度まで下落します(複利での計算)。
▼まとめ:投資は「お金の価値」も見極めてこそ真価を発揮する
どれだけ好成績に見える投資でも、インフレによって実質的な価値が削られていれば、それは「負けている」も同然です。
今後の資産運用では:
- 名目リターンだけで判断しない
- インフレに強い資産を一定割合組み入れる
- 円建て資産のみに偏らないよう通貨分散を検討する
この3つが重要なポイントです。
「数字は嘘をつかない」と言われますが、数字の“見方”が間違っていれば真実は見えません。
ぜひ、資産運用の本質を見抜く目を育てていきましょう。
内部リンク
- 【上級者向け】為替ヘッジの有無で資産価値はどう変わる?国際投資の盲点を掘る
- ポートフォリオ・インシュランスとは?暴落耐性を仕込む高度戦略
- ボラティリティ・パリティ戦略とは?資産クラスの“リスク平準化”という発想