私たちは日々、さまざまな人と関わりながら暮らしています。
その中でときに、「誰に、何を、どう伝えるか」を迷う場面に直面します。
そんなときに思い出したいのが、仏教の教えである「不両舌(ふりょうぜつ)」です。
これは、“あちらとこちらで違うことを言ってはいけない”という教え。
つまり、二枚舌を使ってはいけないという意味です。
「不両舌」とは、信頼を損なう“言葉の裏切り”
両舌とは、まさに“口がふたつある”ということ。
- Aさんには「あなたが正しい」と言い、
- Bさんには「Aさんのやり方はおかしい」と言う。
このような発言を繰り返せば、やがて周囲の信頼を失います。
人と人との絆を裂いてしまい、自分自身も孤立することになるかもしれません。
二枚舌は、一時的な“得”と引き換えに、大きな“損”を生む
不両舌を守ることは、ときに勇気のいる選択です。
場の空気を壊したくない、誰からも好かれたいという気持ちがあるのは自然なこと。
しかし、両舌は一時的には場を保てても、
その場しのぎの発言はやがて矛盾を生み、自分を苦しめる結果につながります。
誠実な言葉が、信頼を築く
不両舌とは、単に“嘘をつくな”というよりも、
**「人の関係を壊すような言葉を口にしないこと」**に重きがあります。
- 言わなくてもいいことは言わない
- 言うべきときには、相手を傷つけない伝え方を工夫する
- 一貫性のある言葉を選ぶ
こうした誠実な姿勢が、人間関係に安心感と信頼をもたらします。
人間関係の悩みは、言葉のズレから生まれる
仕事でも家庭でも、コミュニケーションのすれ違いはつきものです。
ですが、そのズレの多くは「言ったことと、言わなかったことのギャップ」から起きます。
不両舌の実践とは、自分の言葉に責任を持つということ。
それは、相手への敬意であり、自分自身への誠実さでもあります。
まとめ:「本音」と「優しさ」のバランスを意識する
誰に対しても、同じ言葉を使いなさい。
誰の前でも、自分を偽らずに生きなさい――
それが不両舌の教えです。
だからこそ、不両舌を守る生き方は難しく、同時に美しい。
まっすぐな言葉は、時間がかかっても、確実に人の心に届きます。
今日もまた、ひとつひとつの言葉に誠実でありたい。
そう思える瞬間が、人生を少しずつ豊かにしてくれるのです。
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